技術解説1
「システムインテグレーション」
1. システムインテグレーションによって成否が変わる
システムインテグレーションという言葉は、一般にはあまり利用しません。しかし、社会の多くの場面で、システムインテグレーションが実施されています。たとえば、野球の監督は、メンバーの誰を選び、どのような打順とするかなどもチームというシステムのインテグレーションを行っていることに対応します。必ずしも年俸の高い有力選手を集めたチームが優勝するわけではなく、各選手の特質を考慮したチーム編成が重要であることは、良く知られた事実です。このように、システムはインテグレーションの方法によって、その性能が大きく左右されます。
2. 自然科学は分析的
人類は人を含む自然を科学してきました。なぜ、太陽は動くのか?人の身体はどのようにできているか?自然の多くのことが、明らかになりました。これらの多くは、分析的な科学となります。対象を細かく分解して、分解した対象ごとに詳細に解析して、人を含む自然を知り、説明します。

3. 人工物創造にはシステムインテグレーション
一方、人類は生活のために必要な物を作り始めます。自然界にもともとあった物でなく、人類の知恵によって人工物を作り上げます。より複雑な人工物を作るために、多くの要素を利用しなければなりません。そのために、要素を統合する知識、知恵、理論が必要となります。人類は様々な人工物を作り上げてきました。その意味ではシステムインテグレーションの技術は蓄積されています。一方で、そのシステムインテグレーション技術が優れていることを説明するシステムインテグレーションの科学は、なかなか難しく、今後の研究成果が期待されます。
4. ロボットにはシステムインテグレーションが必要
ロボットはセンサ、コンピュータ、アクチュエータ、エネルギー源などの統合体です。したがって、ロボットを作ることはシステムインテグレーションを意味します。一般にシステムインテグレーションの科学が不十分であるように、ロボットのシステムインテグレーションの科学は、未完成です。また、ロボットのシステムインテグレーションの技術も十分に成熟したとは言い難い状況です。ロボットの要素は日々新しいものが生まれています。また、ロボットの利用も新しい分野に広がりつつあります。このような状況で、ロボットシステムの最適なインテグレーション技術を決定することは容易ではありません。
5. ロボットシステムインテグレーション技術
それでは、システムインテグレーションの技術として、共通な知識も明確化できないか?との問いに対しては以下のような知識が必要であると回答ができます。
要素の知識:各要素自身がどのような原理で機能を果たすかを知っている。
要素の連携の知識:各要素のつなぎ方を知っている。
要素の選択の知識:目的に応じて各要素の選択法を知っている。
システムの効果的実現方法の知識:目的に応じたシステム実現法を知っている。
既存の知識のみならず、新しい要素が開発されれば、その新しい要素についても知識が必要となります。また、システムとして効果的に実現するために、十分な能力の要素が存在しない場合には、新しい要素開発も、広い意味ではシステムインテグレーションとなります。
