技術解説2

「ALGoZaでロボットを動かす」

1. 理想と現実

 

今、私が空間の1点を指さしたとします。この1点は、絶対に曲がらない直線と完全に垂直に交わる直線から作られる座標(XYZ)で、指定することができます。ロボットには、動いてほしい運動の指令を与える必要があります。私が指さした1点を、ロボットが理解できる情報として、この座標を与えます。理想的には、ロボットは私の指さした点に到達します。しかし、現実には様々な理由で、ロボットの指先は私の指先と一致しません。

 

2. ロボットの内界センサと外界センサ

 

人間の身体と同様に、ロボットの内部の状況を感知するための内界センサとロボットの外部の環境を感知するための外界センサがあります。たとえば、内界センサは、ロボットの関節にあるエンコーダであり、外界センサはカメラです。これら2種類のセンサがあれば、ロボットの指先は正確に私の指先に到達しそうに思えます。

3. キャリブレーションという問題

 

ロボットが指先を目標位置に移動するために、目標座標(XYZ)に到達する内界センサの値に各関節を移動すればよいと予想できます。しかし、実際にはロボットの置かれている位置と姿勢が、座標(XYZ)に対してズレがある場合やロボットのリンクが撓む場合には、ロボット指先は目標位置に一致しません。そこで、外部の環境を認識できる外界センサのカメラを利用します。この場合も、カメラの座標とロボットの座標にズレがあると同様の問題が発生します。

このような問題を解決するために、座標のキャリブレーションが行われます。いわば、直線の直角や平行を可能な限り正しくする努力です。ロボットもカメラも現実に存在し、理想からのズレを持つものです。しかし、キャリブレーションを利用する方法では、いったんは理想の座標で表現して、ロボットの運動を制御しようとしています。

4. ビジュアルフィードバックALGoZaの開発

 

現実のものは、理想の記述からのズレをもっています。信号も同様です。実世界では完全な直線や完全な剛体は存在しません。実世界に存在する以上は、そのような状態を前提とした制御方法が有用と私は考えます。我々は、この会社においてロボットのビジュアルフィードバック制御に、このような考え方(ALGoZa(有誤座))を導入して、産業用ロボットを高精度に制御することに成功しました。座標に誤差が有ることを前提とするビジュアルフィードバック制御法です。

 

従来のビジュアルフィードバック制御では、ステレオカメラ同士の座標系のキャリブレーションを行い、カメラ座標系の物体位置をロボットのワールド座標系に変換し、さらにロボットの関節角座標系に変換します。先に述べたように、現実には座標系には誤差が含まれるために、キャリブレーションを高精度に達成することは、極めて困難です。

これに対して、我々が提案する制御方式では、対象物と手先の相対的位置偏差のみに基づいて、ロボットが制御されるために、座標系をキャリブレーションする必要はありません。

5. 針の穴の糸通し

 

糸は柔軟で変形します。また、糸が接触した力を感知して、ロボットを動かくことは極めて困難です。そこで、カメラなどの非接触センサが有用となります。ただし、従来のキャリブレーション法では、針の穴に糸を通す精度のビジュアルフィードバックは実現できませんでした。ALGoZaは、この作業を簡単に実現しました。

6. システムインテグレーション

 

各要素には特徴があり弱点もあります。各要素を可能な限り理想に近づければ、それらの要素を集めて良いシステムができると考えるシステムインテグレーションもあります。しかし、実際には理想の要素を追求することや、各要素の特性を調整することが困難な場合が多いです。

今後のロボットは多くの要素を利用する大規模なシステムと想定できます。その際、ALGoZaのように、システム全体で効果を発揮するシステムインテグレーションが有用と私は考えます。ALGoZaは、ビジュアルフィードバック制御についてのシステムインテグレーションの技術を提案しています。さらに、この技術が効果を発揮する理由を科学的にも証明しています。

技術解説

技術解説1 「システムインテグレーション」

<解説の見出し>

  1. システムインテグレーションによって成否が変わる
  2. 自然科学は分析的
  3. 人工物創造にはシステムインテグレーション
  4. ロボットにはシステムインテグレーションが必要
  5. ロボットシステムインテグレーション技術

技術解説3 「ALGoZaの発想」

<解説の見出し>

  1. 位置指令と力指令
  2. 逆変換からの関節角座標系制御
  3. 転置ヤコビ行列制御
  4. 近似ヤコビ転置行列制御
  5. 科学研究費特定研究「移動知」